さて、遠山さんは何でも独学で勉強し、人並みはずれたところまで会得してしまう向学心の旺盛な人です。つまり、子供の頃から、好奇心のカタマリだったのでしょう。それが、この歳になっても続いているわけです。エジソンがベースを弾いていると思えばいいのです。
遠山さんはパソコンで、ライブのフライヤーやご案内など作ってファンに送っています。もちろん、インターネットもやるのですが、人にはメールアドレスを教えません。メールが来るのが面倒くさくていやなのです。それじゃ自分もメールを出すことが出来ません。出すと、アドレスが知られてしまうからです。ですから、名刺にはメールアドレスを決して印刷しようとしませんでしたが、やっと最近アドレス入りの名刺を持ち歩きしています。
しかし、若Gのところには何か困ったことがあると、相談のメールを出さないとならないことがあるのです。そんなわけで若Gはずっと以前からメールのやり取りをしていました。
コンピュータ・ウイルスが蔓延って、防御のしていないパソコンは軒並みシステムが破壊されました。その被害だったのしょうか、遠山さんのWindows
98のファイルが1,2個壊れてしまいました。
若Gのところに、どうやって修復すればよいかを尋ねてきました。事細かに修復のステップを送り返しました。当然、システムCDがあると思っていたのです。ところが、プレインストールのパソコンだったので、CDがないのです。若Gのインストラクションは役に立ちません。実際は、ハードディスクの中にCDに代わるものがすべて入っているのです。しかし、普通の人はどんなファイルがどこに入っているか知らないでしょう。
遠山さんは、もう一度、わかGに助けを求めることはしませんでした。負けん気が強いのです。世の中はWindows
2000が使われている時代なので、Windows 98の本を買おうと思っても、なかなか売っていないのだそうです。何とかいう古本屋に行って見つけてきました。
解説書を紐解いて、ハードディスクのオプションというフォルダに破損したファイルがあることを突き止めて、パソコンを自分ひとりで修復してしまったのです。
「オー、動いた!」
うれしくて、誰かに聞いてもらいたい気持ちです。若Gのところにメールが来ました。どうやって修復したかをつぶさに書いてあるのです。驚きましたねぇ。うちの学生たちでも、そこまでやってしまう者はいそうもありません。院生にはいるでしょうがね。
「少しは褒めてもらえるか?」と言うのです。
「いやぁ、すごい!」って褒めました。本当に偉い人です。遠山さんはベーシストでコンピュータ技師ではないのです。うちのグータラ学生よ。遠山さんを見習いなさい!
遠山さんとは、こんな人なのです。