ジャズと数学

歌はいくつ作曲できる?

曲(メロディ)というものは一体どれだけ作ることが可能なのかという話が出ました。実際には無限というべきでしょうが、あえて計算して数字で見てみようではありませんか。

32小節の曲でたとえば"Ain't Misbehavin'"のようなAABA形式の曲では8小節の主題Aと8小節のサビBを作ればよいものとします。そして、その8小節の中でいくつの音符が使われるかを調べて見ますと、通常の曲で25から35見当です。そこですべての曲がちょうど30音符から出来ているものとします。さらに音符の長短を無視し、音階はド、レ、…、シの7音だけしか使わないものとして、その組み合わせを計算すると7の30乗になります。

30=22,539,340,290,692,258,087,863,249

という数字が出てきます。これは8小節で作り得る曲の数です。これには全部「ソ」の音だけがならんでいる、文字どおりの"One Note Samba"もふくまれていますし、音楽にはならないような曲も全部含まれてのことです。さらにサビが同じ数だけ作れますから、これらを掛け合わせた数だけの曲が作れることになり、

その数は、

60=508,0218,6073,9623,3653,2218,8197,6522,2000,0000,0000,0000,0000

曲です。


この数字を読めとおっしゃるのでしょうか。五百八極弐百拾八載六千七拾参正九千六百弐拾参澗参千六百五拾参溝弐千弐百拾八穣八千百九拾七(じょ)六千五百弐拾弐垓弐千京と読みます。因みにあるだけ書くと、



てなことになります。中学1年生のとき数学の遠藤先生に習いました。こんなところで変な知識が役に立ちました。まことに有り難い授業だったのです。アラビア数字ならばゼロをどんどん書けばいくらでも大きな数を書くことが出来ますが、それを読んだり漢字で書くにはこのような単位の名称が必要になるわけですね。

1無量大数は1068であります。曼荼羅などを考える仏教から来た数の単位であります。仏教の思想は超宇宙的ですね。宇宙の年齢はまだ何百億年かの単位ですから赤ちゃんみたいなものです。日本語で大きな数字を読むためには、4桁区切りを復活したいものですね。

大学院の学生時代、東京天文台台長の古在由秀博士の数理解析学特論という講義の冒頭で

「君たちは宇宙に星がどれだけあるか知っているか」と尋ねられ、 われわれは

「???」

すると先生はうれしそうに

「星の数ほどあります」

「古在先生、音楽も星の数ほどあるのです」昭和39年の春のことでした。

小さいほうも教えろとのリクエストがありました。

分(ぶ)、厘(りん)、毛(もう)、糸(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)

沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、莫(ばく)、模糊(もこ)

逡巡(しゅんじゅん)、須叟(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)

刹那(せつな)、六徳(りっとく)、空虚(くうきょ)、清浄(せいじょう)=10−21

IC工場の「清浄ルーム」というのは、ほこりの密度=10−21なのでしょうか。
ついでに、あちらの国では

one
ten
hundred
thousand
million
billion(米、9乗、英、12乗)
trillion(米、12乗、英、18乗)
quadrillion(米、15乗、英、24乗)
quintillion(米、18乗、英、30乗)
sextillion(米、21乗、英、36乗)
septillion(米、24乗、英、42乗)
octillion(米、27乗、英、48乗)
nonillion(米、30乗、英、54乗)
decillion(米、33乗、英、60乗)

が数の単位名です。

kilo(10
mega(10
giga(10
tela(1012

は接頭語です。


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