歌と歌手にまつわる話

(83) シナトラ特製の Wher or When

Frank Sinatra and Sammy Davis Jr., 1989

1989年11月、サミー・デイビスJr.の芸能生活60周年コンサートがロサンゼルスで開かれました。17年経って書いているのですが、昨日の出来事のように思えます。

この時、サミーは咽喉がんで唄えなくなっていました。

このコンサートにはフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ディーン・マーチン、スティビー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、アニタ・ベーカーなどの歌手達、ボブ・ホープ、グレゴリー・ペック、シャーリー・マックレーン、クリント・イーストウッドなど映画界から、様々のジャンルから超有名人が集まってきました。先代のブッシュ大統領がホワイトハウスからお祝いと感謝の言葉を述べました。サミーは黒人達の教育機会向上のために多大な寄付や基金の設立などを永年にわたって行ってきたのです。自分は4歳のときからショービジネスの世界に入ったのです。

司会はエディー・マーフィーでした。悪いですが重量感に欠けます。はっきり言ってミスキャストです。このコンサートには誰を司会に持ってくるかで苦労したと思います。エド・サリバンでも生きていれば、適任だったのでしょうが。日本人であるなら小島正雄といったところです。気持ちは分かってもらえると思います。

トップを切ってステージに出てきたのは、御大のシナトラでした。

「今夜は大勢の人が君を言葉の限りにほめたたえるだろうから・・・」と言って初っ端に登場してきて一番にスピーチをしたのです。

「サム、君は私の兄弟だ」

そして、シナトラが唄った歌が"Where or When"でした。シナトラは半年後に亡くなるサミーに万感の思いをこめてこの歌をささげたのです。全てがこの1曲の歌に凝縮されているように思いました。

こんな心のこもった歌を聴いたことがありません。シナトラ、一世一代の"Where or When"です。

シナトラの歌で聴きたい1曲といえば"I've Got You Under My Skin"だと以前に書きました。しかし、この日の"Where or When"だけは、どう考えても特別です。

私の手許に、「いつかはこのバージョンでWhere or Whenを唄おう」と採譜してありました。結局、畏れ多くて唄えないままでした。シナトラの歌ばかり唄う私の後輩がいます。そこで、「Where or Whenのいい譜面があるけど要るか?」と言ったら、やはり欲しがりました。ただし、この唄い方で唄うことを期待してあげたのではありません。シナトラの歌を「軽々と歌うものではない」というメッセージを込めた積りです。

そんなことで、この古い話題を思い出して書いておきました。(2006)

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この記事を書いてから、数年が過ぎました。昔のビデオがDVDにしてしっかり取ってあります。その冒頭のシナトラを切り出してU Tubeにアップしておきました。”Where or When”という歌はシナトラが特に好んで歌った歌でした。U Tubeにも沢山出ています。こだわりかもしれませんが、この時のシナトラは兄弟分のサミーに捧げて歌いました。心のこもった”Where or When”は何物とも比べ物になりません。(2012/2/15)


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