ジャズと数学

ミリオン・セラーの今昔 Sheet MusicとTin Pan Alley

ミリオン・セラーとよく言います。レコードが100万枚売れたことを以ってそのように称するのです。これはみなさんの知っている時代のお話です。

その昔は、レコードがポピュラーになったとはいえ、どこにでもあるわけではありません。19世紀には音楽の媒体は譜面しかありません。Sheet Musicといいます。1920年代、30年代はむしろ歌の譜面が主流だったのです。コットン・クラブが華やかなりし頃、Sheet Musicの表紙のデザインをより凝ったものすることが流行りました。

このようなポピュラー音楽の作曲家や作詞家を抱えた軽音楽出版ビジネスが1890年代半ばから盛んになりました。これをTin Pan Alleyと呼びます。譜面、ポスター、絵葉書などを売っていたのです。ニューヨークのブロードウェイと6th Avenueの間の西28番街には、このような出版社がたくさん集まって来ました。そこで、この辺りを"Tin Pan Alley"というニックネームで呼ぶようになりました。

Tin=錫、Pan=鍋、Alley=横丁です。これらの店ではピアノを弾いて譜面の音楽を視聴させるのです。たくさんの店で音楽を鳴らすと、夏などは窓が開けっ放しですからTin Panを叩き鳴らすようなうるささだったのです。

数十年続いたTin Pan Alleyも1954年、Bill Haley and His Commets"Rock Around The Clock"、1956年のエルビス・プレスリーの"Heartbreak Hotel"のレコードが爆発的にヒットし、これを境にしてTin Pan Alleyは廃れていきました。

われわれの少年時代には、シングル版でも中華そば10杯の値段でしたから、レーコードを買うのは簡単ではなく、ラジオで聴いては楽譜の本(1冊100円前後)を紐解きながら歌やコードを憶えたものです。

したがって、その昔のミリオン・セラーとは譜面が100万枚以上も売れたものということになります。これで大ヒットと騒がれるのです。現在では、LPCDのようなアルバムが100万枚も売れたりするのですから時代も変わりました。

 「そんなに誰が買うのかって?」
 「あなたたちのお子様が、来年には聴くことのないCDを消耗品のように買うのですよ」

この話は20世紀の子供の話です。21世紀の若者は気に入った曲をインターネットから自分のスマホやiPodなどにダウンロードします。経済的といえば経済的ですが、何の夢もありません。昔、大枚はたいて買ったLPに、何十年もしてからすごい名曲が入っているのを発見したりします。ガキの頃には良さが分からない歌や曲がごろごろあるのですよ。

わたしは昔のSheet Musicのコレクターではありませんが、シナトラ協会の志保澤さんにもらったシナトラのものが一番古いものです。スキャナーの関係で少々寸詰まっていますがとりあえずはご勘弁ください。左のものはコットン・クラブから出されたものです。このような貴重品をコレクションしている人がいるということを聞きました。戦前や戦後間もなくの頃のブリキのおもちゃなどがいい値段しているらしいですが、同じような話ですね。



 Ted Koeller, Harold Arlen(1931)


Ted Koeller, Harold Arlen(1932)


Tom Arden, Hal Hopper(1944)
   

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わたしはここのお得意さんになりました。何百ドルも買って本棚は譜面やソングブックの山です。友達の歌手が「xxxの譜面のコピーを送れ」などとメールを送ってきます。FAXしてやります。


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