ジャズと数学

わけの分からぬ方程式

 かつてグレンミラー楽団のドラムス、ジョージ・サイモンGeorge Simon(1912- )はハーバード大学出身のインテリで、もの書きも本職でした。Metronome の編集長をはじめ、New York Herald Tribune など新聞の記事も書いております。1977年にはビング・クロスビーのアルバムのライーナーノーツに対してグラミー賞が与えられました。

 さて、トミー・ドーシー楽団のドラマー、デイヴ・タフDave Toughが1937年にMetronome に寄せた記事にこんなことが書いてあります。

  「ジョージ・サイモンは音楽批評の公式を解きつつある。それは

という恒等式で、音楽評論家たちはこの公式に従うことになるであろう」

  みなさん、何のことを意味する式だか分かりますか?わたしは数式を扱うのが本職ですが、未だにこの式の意味をくみ取ることが出来ません。しかし、意味を教えろというのは、野暮というものです。日本人が苦手とするあちらの人のユーモアなのです。

  ちなみに、この公式に登場する人物は、

Ray Bauduc(1909-1988)  J. Teagarden, B. Goodman, G. Millerなどの楽団のドラマー。
Chick Webb(1909-1939) バンドリーダーとして名高い。エラをここの専属歌手として雇ったことでも有名。子供の頃にドラムスセットを買ったのが最初。
Ray McKinley(1910-1995) Dorsey兄弟などと活躍したドラマーでシンガー。後にG. Millerオーケストラと行動する。
Sidney Catlett(1910-1951)

Big Sidと呼ばれたスイング時代のドラマー、Louis ArmstrongやB. Goodmanらと共演した。

Zutty Singleton(1898-1975) hi-hatの原形であるsock cymbalsやワイヤーブラシを早い頃から使ったドラマー。

というわけです。もうひとつ、念のためtom-tomというのは太鼓の音です。


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